把手付けたような開発ブログ

スクラムマスター/ソフトウェアエンジニアとしての学びをつらつらと

初めてのスクラム導入が、なぜ失敗してしまったのか

どうも皆さんこんにちは。
鞍馬ぽめると申します、よろしくお願いいたします。

はじめに

初めてのお仕事、皆さんはどんな思い出が残っていますか

ぼくのスクラムマスターとしての初めてのお仕事は、完全に失敗してしまいました

結果としてリリース予定を守ることができず、売り上げも伸びず、最終的にはサービスを閉じることとなってしまいました

今回は当時のことを振り返りながら、今後同じ失敗を繰り返さないために、なぜ失敗してしまったのかを考えていきたいと思います

ちなみにすごく長くなっちゃったのと、ポエム感満載ですので、お時間ある時にでもどうぞ

スクラムマスターをやることになった経緯

お仕事の内容はあまり詳しくお話しすることができないのですが、スクラムマスターとして初めて携わったプロダクトは、すごくざっくりとお伝えするとフルスクラッチから始めたゲームアプリでした

当時、スクラムにおける開発者としての経験が一年くらいあったぼくは、今回も是非ともスクラムでやっていきたいという旨を上司に伝えたところ、
言い出しっぺということでスクラムマスターを任せていただくこととなり、そこからぼくのスクラムマスター生活が始まることとなりました

失敗した主な要因をあげてみる

そんな形でスタートしたスクラムマスターとしての活動ですが、失敗につながったと思われる主な要因を 4 つほど上げてみたいと思います

  1. そもそもスクラムに関する知識が足りていなかった
  2. ステークホルダーを巻き込む動きが足りていなかった
  3. リードエンジニアとしての帽子を同時にかぶってしまっていた
  4. 現実と素直に向き合っていなかった

はい、今ならわかりますが、 スクラムマスターとしてやってはいけないこと一覧 みたいになってしまっていますね

もちろん他にもたくさん要因はあると思いますが、今回はこの 4 つを振り返ってみたいと思います

そもそもスクラムに関する知識が足りていなかった

スクラムマスターの役割について スクラムガイドのスクラムマスターの項 には、その一節目に以下のように記されています

スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確立させることの結果に責任を持つ。

スクラムマスターのお仕事は

などがあげられますが、どれをとっても必ず必要となってくることが スクラムのプロセスや考え方を深く理解していること です

しかしながら当時のぼくのスクラムに関する知識は、開発者としての経験の一年ほどの知識しかありませんでしたので、全くと言っていいほど足りていませんでした

結果として、以下のような問題につながってしまいました

  • スクラムの勉強会を行うも、 借り物の言葉になってしまう ため、十分に伝えることができない
  • フルスクラッチからスクラムのサイクルに乗せる方法を知らないため、スタートから戸惑いが生じてしまう
  • スクラムのプラクティスを部分的に取り入れたような なんちゃってスクラム になってしまう
  • 失敗した時のリカバリーの仕方も知らないため、ずるずると失敗が積み重なっていってしまう

目も当てられませんね、、、

スクラムにおいて「 守破離 」で進めることは物凄く大切です
特に初めてスクラムを導入するのであれば、丁寧すぎるくらいに「守」して、プロセスと考え方を組織に浸透させることを強く意識した方が良いです

当たり前の話ですが、スクラムマスターの知識が足りていないのであれば「守」で進めることもそれを支援することもできません

ステークホルダーを巻き込む動きが足りていなかった

スクラムマスターの重要なお仕事の中に、スクラムチームとステークホルダーのジョイント役になる(繋がるように支援する)役目があります

当時チームから最も近い位置にいたステークホルダーは事業責任者の方でしたが、チームとステークホルダーのやりとりは全て、その間のポジションの方( PdM にあたるマネージャ職の方)を介しての伝言ゲームで行われる形になってしまっていました

伝言ゲームによって透明性は失われ次第にチームとステークホルダーはお互いを不振がるようになってしまいました

スクラムマスターとして、 伝言ゲームによって透明性が失われることの危険性 を指摘できず改善を促さなかったため、このような事態につながってしまいました

副次的な作用として、リソース追加の依頼が出しにくくなったり、ビジネスレイヤーの考えが伝わらなくなってしまったりするなど、さまざまな良くないことにつながってしまいました

リードエンジニアとしての帽子を同時にかぶってしまっていた

エンジニアのスターティングメンバーとして参画したぼくは、 リードエンジニア としての役割も任せていただきました

スクラムではスクラムマスターが他のポジションを掛け持ちするのはアンチパターンとされてますが、
スクラムの運用に慣れてきて自己管理化が進んでくると誰かがスクラムマスターを兼任する場合もあるかと思います

そういう時は、「どちらの役での言動か」がわかるように 帽子を被り替えると良い なんて言ったりしますが、ぼくは両方の帽子を同時に被ってしまったわけですね

判断する立場と判断を支援する立場が自分の中でぶつかってしまい、メンバーにも混乱を生んでしまいました

現実と素直に向き合っていなかった

そんなこんなでずるずると負のスパイラル、デスマーチにハマっていってしまったのですが、極め付けはそんな現状を何かしら理由をつけて改善に動けなかったことでした

話はちょっとそれますが、ぼくは何事も 一番成長する瞬間は「ふりかえり」を行った時 だと思っています
継続すべきことも改善すべきことも、振り返りを行うことで明確になり、実践することで今より良くなっていきます

ふりかえりはレトロスペクティブという形でスクラムのプロセスにも含まれていますが、価値あるふりかえりを行うためには 目の前の現実を明らかにして、素直に受け入れることが大切 だと考えています

ただ、当時のぼくは目の前の現実に素直になれていなかったんですね
有意義な「ふりかえり」が行われず、正しくスクラムを回せていない現状をぼくは素直に受け入れることができず、「スクラムをやっている」気になっていました

もともとウォーターフォールでの開発に慣れていたメンバーが多かったことから、開発の進め方は徐々にウォーターフォールを繰り返し行うような形になっていってしまい、
結果としてチームからは「現状はスクラム開発で進めているとは言い難いよね」という声や「スクラムの良さがわからない」という声が上がってしまいました

どうするべきだったか

まず スクラムマスターとしてちゃんとしたスクラムの知識をつける こと、もしくは 知見のある方にコーチングを行なっていただく ことから、スタートするべきでした
Scrum Boot Camp は入門書としてはこの上ない良書ですが、それ一冊の知識を付け焼き刃で身につけただけのスクラムマスターが易々と回せるほどスクラムの実践は簡単ではありません

人に説明するときも借り物の言葉ではなく、自分の言葉で話せるようでなければ、相手に理解してもらうことは難しいです
スクラムを導入するすることでどういった効果が期待できるのかを理解してもらい、スクラムチームのメンバーだけでなくステークホルダーも巻き込んでいくためには、自分の言葉で話せることはとても大切なことです

加えて、 サーバントリーダーシップ を持ってそれを実践していくべきでした
そもそもスクラムの知識が不十分であったことから、そういう考えに至ることができなかったのですが、「 自分が周りをリードしなければならない 」という思いで行動してしまうと、自己管理型のチームは実現できません

最後に素直であることですが、チームをより観察し、良い面だけでなく改善すべき面があることを認め、その改善が行われるように促す動きを取るべきでした
時には誰かが言いにくいようなことを言う必要が出てきます
透明性を確立しアジャイルな開発を成功させるためには、スクラムマスターとしての重要な働きになります

もちろんポジティブなチーム作りとして心理的安全性を確保することが重要なので、その塩梅には気をつけないといけません

その後

結果としてそのプロダクトはサービス終了してしまいましたが、その後二本ほど新作のためのモックアップスクラムで作る機会がありました

その際にぼくは、スクラムマスターとして以下のようなことを意識して実践しました

  • 正しい知識を身につけるため、 認定スクラムマスターのトレーニングを受け、資格を取得 する
  • フルスクラッチからスクラムを回す方法を いくつかの書籍を跨いで学習 する
  • モックアップ開発に携わる数名に対して、まる2日かけて 改めてスクラムの勉強会を一から行う
  • 仕様や設計について自分から答えを示すことは絶対にせず、 PO と開発チームの直接的なやりとりで次に進めるように 会話の場を積極的に設ける
  • チームを観察し、誰かがうまく行っていないようなときは、 個人ではなくチームで解決するように話題を広げる
  • PO や開発チームからスクラムの回し方で質問があった場合に 自分の言葉で説明する

かなり丁寧なやり方ではありましたが、一週間スプリントの4スプリントでモックアップ一本の完成を目標にとにかく「守」を意識して実践した結果、一ヶ月に一本、二ヶ月で二本のモックアップを残業ほぼ 0 で PO と開発チームが同じ方向に向かいながら作り切ってくれました

この先のことは、またお仕事のことなので詳しいお話しできませんが、失敗から得た学びを活かすことができたと自負しています

これから

アジャイル開発やスクラムは一般的になってきたとはいえ、まだまだ導入がうまく行っていないチームやこれからチャレンジしていきたいと思っているチームも多いと思います

ぼくはそんなチームへのスクラム導入支援として、スクラムマスター、アジャイルコーチとしてのお仕事を今後もっと広げていきたいと思っています

また、より幅広い知識を身につけるように学習を続け、 A-CSM, CSP-SM とスクラムマスターとしてのスキルアップも継続して努めていきたいと考えています

最近は転職も考え始めておりますので、もしスクラムマスターを探している方がいらっしゃいましたら、 Twitter の DM までご連絡ください

めちゃくちゃポエムになってしまいましたが、同じように導入がうまくいっていないと感じている方にとって、少しでもリスタートのヒントになることができていましたら幸いです

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました